鍼治療後に「あざ」が出来たとき

鍼治療でできる「あざ」は、体質にもよりますが、長くても2~3週間ほどで消えることが多く、ずっと残るものではありません。しかし、目立つ場所にあざができてしまったら嫌な気持ちになりますよね。

鍼でなぜ「あざ」ができるのか?

さまざまな治療法がある中で、鍼は比較的、副作用が少ないと言われています。しかし、鍼をからだに刺しているため、稀に出血やあざ(内出血)を伴うことがあります。

鍼に興味があったのに「あざができることがある」と聞くと急に不安になったり、一度あざを経験して怖くなったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

あざの原因

鍼治療によるあざ(内出血)の原因は、何らかの理由により弾力性がない血管を鍼が傷つけてしまうことです

血流が悪く弾力性がない血管は、通常の血管より脆く傷つきやすいため、髪の毛ほどの細い鍼でも傷ついてしまうことがあります。傷ついた血管から漏れた血液が体外へ出ず、皮下にとどまった状態をあざと言います。

あざになりやすい血管を具体的にイメージするために、良い血管と悪い血管を比較してみましょう。

▼正常な血管

  • 血液の流れが良い
  • 血管に弾力がある
  • 鍼を刺しても血管の方が避けてくれる

▼不健康な血管

  • 血液の流れが悪い
  • 血管に弾力がない
  • 鍼を刺したときに血管が避けられない時がある

このように、弾力性のない血管に鍼が当たってしまうとあざの原因になってしまいます。

「あざ」は鍼灸師が下手だからじゃないの?

確かに、鍼灸師の技術不足により、あざができてしまうこともあるようです。

しかし、長年鍼を打ってきた熟練者だからといって絶対に内出血を起こさないとも言い切れません。

なぜなら、毛細血管は非常に細かく、全身に広がっているため完全に避けて鍼を刺すことは難しいからです。

「毛細血管」は太い血管が非常に細かく枝分かれし、網目状につながっている細い血管で、太さは赤血球がやっと通れるくらい(直径8~20μm)の細さです。全身の毛細血管をつなげると、なんと地球2周半ほどの長さになる!ともいわれています。

そんな無数にある毛細血管を見分けて傷つけないように鍼を刺すというのは、どんなにベテランの先生でも難しいと言えます。

あざができやすい人の特徴

あざになることは「悪いこと」と思われがちですが、体質や健康状態によって誰でもできる可能性があります。

<あざになりやすいケース>

▼遺伝や体質

  • 家族にあざができやすい傾向があり、それを受け継いでしまっている
  • 体質的に、ホルモンバランスが崩れやすかったり、皮膚が薄かったり、出血傾向がある

▼ストレスや疲労

  • 精神的、肉体的に疲れが溜まっており、からだ全体の代謝が悪くなり、血管が弱くなっている

▼病気

  • 高血圧、高脂血症、糖尿病など血管や血流に影響がある病気にかかっている

▼喫煙・加齢

  • 喫煙は、血管を収縮させるため血流を悪くし、血管に負担をかけている
  • 加齢により血管が脆くなっている。

 

意外と多くの方が当てはまるのではないでしょうか?

〇実際にあざができてしまった時はどうすれば良い?

あざは長くても2〜3週間ほどでいつの間にか消えていきますが、「ずっと残ってしまったらどうしよう?」と心配になりますよね。

そこでより安心していただくために、実際にあざができてしまった時の対処法について説明していきます。

あざができた時の対処法

あざができた直後は、指で軽く押さえ、内出血した場所を氷で冷やすとあざが早く治ると言われています。

基本的には内出血を起こしたあと、痛みがあったり、プクッと腫れていたりする時は冷やし、そのあと痛みや腫れがなくなった後は温めます

温めることで血行を良くし、新陳代謝を高めることで皮下に残った血液が体内に吸収されやすくなるのを補助することができます。

おすすめは、お風呂に入りながら、あざの周りを優しくマッサージしてあげるとリラックスできて、からだも温まり、全身の血行が良くなるので効率的です。その際は内出血を起こした場所を触らないようにしてくださいね。

あざを早く消してくれるお灸があるって本当?

あざを早く消してくれるお灸として知られる、知熱灸(ちねつきゅう)をご存知でしょうか?

知熱灸は、円錐状に固めた艾(もぐさ)を皮膚の上に直にすえ、熱感を感じたり、8割方燃えたところで取り除く、古くから行われている灸法の一つです。

もちろんあざを魔法のように消してくれる訳ではありませんが、局所的に血流を改善してくれるお灸のため、あざを早めに消すお手伝いをしてくれます。

知熱灸をやってみたい方は、鍼灸院で相談をしてみてください。

また、熱さに敏感だったり、火傷が心配な方は、皮膚の上に艾を直にすえずに、艾と皮膚の間に何かを挟む間接灸というタイプもありますので、検討してみてください。

〇あざのリスクを下げる3つのポイント

1. 細い鍼を使ってもらう

鍼が太いほど内出血した際にあざは大きくなりやすいので、あざになることが心配な方は細い鍼で治療をしてもらうと良いでしょう

鍼灸師が使う鍼は髪の毛と同じくらい細いと言われていますが、さらに数ミリ単位で細かく種類があります。一般的には、細いもので0.10㎜から太いもので0.30㎜くらいの鍼があり、治療する部位や患者の体質によって鍼の太さを使い分けています。

2. 肌の不調を整える

あざの原因は、血行が悪いこととお伝えしましたが、お肌の状態はそのバロメーターになります。

特にお顔は、からだ中のパーツの中でもデリケートな場所です。肌トラブルが多いお顔に鍼を刺すと、肩や腰に刺した時よりあざになりやすい傾向にあります。

お肌が荒れているということは、血行が悪いことにより肌の代謝がうまく働いていない証拠なので、普段からお肌の不調を整えることは重要なことです

3. 大事なイベント前は事前に相談する

結婚式などのイベント前であれば、肌が露出する部位やあざができやすい箇所の治療を避けてもらうよう鍼灸院に事前に申告しておきましょう。

 

まとめ|擦りむいたら血が出るように、あざも生理現象のひとつ

あざは、誰にでも起こり得ることがおわかりいただけたでしょうか。

治療者は内出血を起こさないように、技術や鍼の工夫でリスクを最小限に減らす努力をしています。

もし、鍼灸治療を受けてあざができてしまっても、時間が経てばいつの間にか消え、ずっと残ることはありません。

あとは、あなたの不調を改善し元気になることです。そして、そのお手伝いをできるのが鍼灸治療です。

鍼に対して抱いてしまったネガティブな感情が少しでも軽減し、一度は鍼から離れてしまった方も「もう一度鍼をやろうかな」と思っていただけたら幸いです。